ビワの葉療法

もう十年ほど前になろうか。十月の末ごろ例によって魚釣りの虫が騒ぎ和歌山の防波堤に出かけてみ

た。アジかチャリコ(小鯛)でも釣って南蛮漬けにして酒の肴にして一杯やるのがこれがまたたまらな

いのだ。小雨混じりの天気で季節の割にはさぶい一日で釣果のほどは三時頃にはクーラーが満タンに

なった。しかし先ほどからどうも肛門ところがちくちくして痛みが走るのである。ちっと指で触っ

てみると何かおできのようなものが出来ていた。

 

それから一週間たっても治らずそのうちに膿みが出るようになり一向に治る様子もなく、いくら絞

っても膿みが出て軟膏を塗ってみても効果もない。これはどうもおかしいと思い、痔など今まで経

験がないのでアーユルベーダほかいろいろな書物から推察すると痔ろうであるようだ。それがわか

ったとき全身から力が抜けていくのが朗かで、というのも少林寺拳法の道場主が入院したのがこの

病気で病院の裏口からこっそりと退院したのを知っているからだ。あれだけ元気で怖いもの知らず

の先生が冷たくなってあの世に行ってしまったのだから、私は震え上がってしまった。

 

それは痔ろうは結核菌が変形したもので抗生物質が今の私には効果がないことだ。病院へ入院する

ことになれば仕事はできず、単身赴任で大阪に来た私にとって何ケ月も休める状態ではないからだ。

たとえ入院できたとしても肛門を切り取って人工肛門をつける羽目になるので何とか解決法がない

かと思案していたとき、ふとある民間療法を思い出した。それがビワの葉療法で急を要するので人

間医学社に行きビワの葉のエキス(薬品には認められていないのでドリンクとして販売されている)

を買い求めそれを患部につけるとともに、ビワの葉を採取して水で洗い裏側の繊毛部分をよく落と

し、つやつやしているほうを患部に当てその上から熱々のコンニャク湿布をして様子を見ることに

した。

 

その当時はある発電所で社員の送迎バスに乗務していたので座り通しの毎日で一日何回もトイレで

湿布を張替え家内の案で生理帯で患部を湿布した。やがて日がたつにつれ膿みの出が少なくなり三

ヶ月ほどで完治したのだ。痔ろうはほっと置くとやがてトンネル状に何本も出来て直腸までトンネ

ルが届くと出血して死亡する恐ろしい病気なのだ。ビワの葉にある青酸が皮膚から浸透して抗生物

質でも退治できないところの病原菌を一掃してくれるのだ。この私の経験からでもお分かりのよう

に民間療法とはいえども馬鹿にするものではない。私はこのビワの葉療法で命が救われたのだ。参

考までにビワの葉療法の歴史と治療法を下記に紹介する。

 

 

3000年の歴史が証明する自然療法の効果

ビワの葉療法は、もともとわが国に古くから伝わる民間療法の一つで、昔は全国各地でビワの葉を

使ったいろいろな治療法が行われていました。たとえば、「ビワの葉を火にあぶってからからだに

当てる・ビワの葉を煎じて飲む・ビワの葉をすりおろして皮膚に塗る・ビワの種を煎じて飲む・ビ

ワの葉の煎じた液で湿布する・ビワの葉を入浴剤として風呂に入れる・ビワの葉をお灸に使う」な

ど実にさまざまな治療法がありました。

 

ビワの葉を使う治療法は、もともとインドから中国を経て、仏教医学として仏教が伝来したときに

暦法、天文、方術、医方などとともに伝えられたものです。仏教医学とは、古代インドの医学を縦

糸としたら、仏教を横糸として織られた布のように、実に3000年の昔から人間の知恵が集積されて

現代に伝えられた医学です。当時次々と建てられた仏教のお寺には、ビワの木が植えられたと言わ

れます。当時のお坊さんは仏教を布教するかたわら、病気で苦しんでいる人があれば、ビワの葉療

法を行って癒したと伝えられています。

 

ビワの木の「琵琶」という名前は、その葉の形が昔の伝統楽器の「琵琶」の形に似ているために名

づけられたと言われています。わが国では、古くからビワの葉や種にはすぐれた薬効があることが

知られており、今日まで伝えられてきました。先に述べたとおり、はじめは寺院の僧によってビワ

の葉を使った医療活動が熱心に行われ、人々の心とからだを癒してきたのです。当時よく行われた

のは、おそらく一枚のビワの葉でからだの痛むところをなでるとか貼っておくというものだったと

想像されます。ビワの葉を火であぶり、熱いうちに患部に押し当てて摩擦するという素朴で原始的

な療法でした。

 

こうしたビワの葉療法は、お釈迦様の時代からあったもので、仏教の古い経典にもビワの薬効のこ

とが説かれてあり、ビワの木を「大薬王樹」、ビワの葉を「無優扇」と呼んで、「生けるものすべ

ての病を癒す」とたたえられています。このように、ビワの葉療法は仏教とともにわが国伝えられ

、聖武天皇の天平二年(730)には、光明皇后が創設された「施薬院」という施設でも、ビワの葉療

法が行われたと伝えられています。また、昔の漢方書の「本草綱目」にも、ビワの葉のことが詳し

く記されていますし、ビワの葉療法が古くから伝わる療法として広く行われ、すぐれた薬効を示し

て、難病に苦しむ多くの人々を救ったという歴史的な事実がいろいろな書物に記されています。

 

ビワはバラ科の植物で、ビワの葉にはさまざまな薬効成分が含まれています。そのうち、とくに注

目されるのがアミグダリンという成分で、これが中心となって、あらゆる病気の原因となっている

汚れた酸性血液を、健康体に必要な弱アルカリ性の血液に浄化するのです。体内の血液が浄化され

るということは、全身の新陳代謝が活性化されて、人間に本来備わっている免疫力、自然治癒力が

強化されることにつながります。要するに、人間の生命力が高められて、あらゆる病気を治癒に導

く力が強められ、健康が維持増進されるということです。

ビワの葉療法には、ビワの葉を火であぶって患部に押し当ててこする方法をはじめ、ビワの葉エキ

ス療法、ビワの葉のおろし汁を使う方法、ビワの葉温灸療法などいろいろな種類があります。

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