第3節分子生物学

中枢神経についてもっと詳しくしらべてみよう。それはニューロンからできてい

る。ニューロンは興奮しやすく、その長い軸索にそって電気パルスを走らせ

る。これらのインパルスが、神経細胞につながった筋肉繊維に小さな科学変

化を引き起こして、それを収縮させる。それでイエスかノーの選択をしている

のである。しかしもっと小さな部分で神経細胞内部の酵素分子の上にある活

性原子群の一部であり、細胞内壁のすぐそばにある。この酵素は一種の門

番である。その酵素には尻尾があって、その尻尾は細胞内壁にきわめて近

い所にあって、神経細胞が発火するときにはいつでも、その尻尾がチャンネ

ルの門と接触する。この酵素にメチルアミンをあげている。メチルアミンは、尻

尾をつくつている側鎖の終点にある分子である。この小さな分子の一部で

は、二個の水素分子と一個の窒素分子が三角形をつくっており、この分子の

三角形が、アルドラーゼのような大切な酵素の活性のカギをにぎっている。

神経細胞が発火すると、蛋白質でできたチャンネルの門が変形し、酵素の尻

尾が門の内部に入る。このとき、尻尾の先端にある二個の水素原子が上か

下かで門が開いたり閉じたりするのである。私たちの意識の最先端の選択が

一組の分子(水素分子2個・窒素分子1個)によって左右されているのであ

る。

無髄神経

無髄神経は神経細胞の一部が長く伸びて神経電線となり、この長く伸びた神

経繊維をもつ神経を無髄神経という。無髄神経の末端には特別な接続部(シ

ナプス〕ができ、情報を伝える電流がそのシナプス方向性をもって流れるよう

になる。その結果、情報伝達のスピードがあがり、自由度も大きくなり、動物

としての能動的な行動ができるようになったのである。さらに進化して無髄神

経は髄という優秀な絶縁被覆を被るになり、その効果が百倍もあがる。この

髄鞘をもつ神経を有髄神経という。情報伝達の速度で比較すれば、ホルモン

分泌細胞では毎秒数センチ、無髄神経では毎秒1メートルであったものが、

有髄神経では毎秒100メートルにもなった。人体では筋肉(骨格筋)を動かし

ているのは有髄神経だが、内臓を支配する自律神経系は無髄神経によって

構成されている。神経細胞は情報を敏速に伝えるための手段として、細胞内

の科学物質を利用している。このような神経情報を伝達する物質を神経伝達

物質を(ホルモン)と呼ぶ。細胞から分泌されたホルモンは、血液の流れにの

って体内をまわり、全身の細胞に情報を伝達する。このとき体内には、特定

のホルモンに反応する細胞(標的細胞)があり、レセプター(受容体)と呼ばれ

る情報の入り口から受け入れる。ホルモンはレセプターによって標的細胞に

結合し、情報を伝え、細胞を活動させる。これがホルモン系の情報伝達の仕

組みだ。レセプターとは、ある鍵だけを受け入れる鍵穴のようなものであり、

鍵穴にぴたりとはまった物質だけが情報を伝えられる。神経細胞の接続部に

は、約1万分の1ミリという極小の隙間があいている。この接続部をシナプ

ス、隙間をシナプス間隔と呼ぶ。人間の脳にはアナログ型とデジタル型という

二つのタイプの異なるコンピュターが同居しているといえる。脳幹、大脳辺縁

系、大脳基底核などがアナログ型の脳であり、大脳、小脳はデジタル型の脳

である。この違いは、それぞれの脳で主に活動する神経の違いから生れてく

る。無髄神経と有髄神経の差である。無髄神経と有髄神経では、その情報伝

達に大きな違いがある。優秀な絶縁被覆をもつ有髄神経は、その情報伝達

が早く、デジタル的であるという特徴をもつ。それに対して、髄鞘をもたない無

髄神経のそれは遅く、アナログ的だ。さらにそれぞれの神経伝達物質の性質

からも、アナログとデジタルの違いが生れる。神経伝達物質としては、有髄神

経ではアミノ酸、無髄神経ではそれを一工程分解したアミンという分子が使わ

れている。これらの分子の大きな相違は、アミノ酸はまったく無毒な分子であ

るが、それが分解されてアミンになると、猛毒になってしまうことだ。この違い

は有髄神経の作用はその複雑な回路によってデジタル的におこなわれると

いうことである。いっぽう無髄神経の作用は、神経伝達物質の性質とその作

用量に依存してアナログ的におこなわれているということだ。さらに人間の脳

内では、視床下部・脳下垂体を中心にホルモンが分泌されているが、これは

いってみれば超アナログであり、ホルモンの性質にさらに依存している。人間

の脳の優秀性は、これら二つのタイプの脳コンピュータをさまざまな意味で共

用しているところにある。人間の脳は、アナログ型コンピュータの上部にデジ

タル型コンピュータを付け加えた構造になっており、このように二つのコンピュ

ータをマッチさせることは、現在のコンピュータ技術でも、まだ成功していな

い。そして心は、このアナログ型とデジタル型の二つの脳コンピュータの有機

的な共同作業のなかから生れてくるのである。ピラミッド的構造1954年に、

アメリカの心理学者A・H・マスローは欲求には階層的構造があることを提唱

した。マスローは、人間の欲求はピラミッド的構造をもつと考えた。

@食欲、性欲など生きるための生理的欲求

A安全性と安定性の欲求

B愛情と所属、すなわち相互信頼の欲求

C自尊心と他から尊敬されたい欲求

D自己実現の欲求

そしてマスローは、「上位の欲求を満足させるためには、前段階の下位の欲

求がある程度、充足されなければならない」と指摘している。欲がこのような

階層性をもつことは、人間の脳の構造からみても当然であるといえよう。私た

ちの生命の根底には、まず「生きよう」とする本能的な欲があり、そこから固

体維持のための食欲・種族維持のための性欲などが醸成されてくる。欲がな

ければ人間は生きることはできないのである。「欲」とは、生きるために何か

をしたいという、人間を含めて動物が生きていくための駆動力であり、生命力

といえるものである。この原始的な「生きよう」という視床下部の欲が、上位の

大脳で昇華されて意欲、意志となり、心の創出の源になる。その意味で視床

下部は、欲によって「心のシステム」の電源をオンにする「スイッチ脳」というこ

とができよう。このように、視床下部は欲を生みだす根源的な脳であり、小さ

な脳であるが、きわめて重要な脳なのである。欲の根源脳・視床下部では、

どのような科学分子がはたらいて欲を生みだしているのか、性欲を例にして

説明しよう。性欲は性をしたい、やりたいという欲であり、快感をともない、種

族維持の源泉である。これなくしては、人類という種は絶滅してしまう。性欲を

生むのは視索前野とりわけてその内側にある内側視索前野だ。ここからは、

性欲の素となる分子LHRHが多く分泌されている。視床下部の神経細胞から

分泌され、視床下部から垂れ下った脳下垂体のホルモン分泌細胞を刺激し、

脳下垂体ホルモンを分泌させるからだ。このLHRHは脳内で性欲を生ぜしめ

るほかに、体内では女性の性サイクルを支配し、男性の精子製造も最上位

からコントロールしている。LHRHは、生命の根源分子であるタンパク質をわ

ずかに分解したペプチドのホルモンでタンパク質分子が有する遺伝情報をも

っており、それにしたがって作用する。ホルモンや神経伝達物質のほとんど

はタンパク質から作られる。ペプチド、アミノ酸、アミンは有機化合物である。

有機化合物の特徴の一つは、俗に「亀の甲」といわれる六角形の「ベンゼン

環」を作れることだ。ベンゼン環は、炭素原子が六角形の亀の甲型に結合し

た特別の分子で、最大の特徴は、強い科学反応性の源になる二重結合を3

個ももっていることである。主要なホルモンや神経伝達物質のほとんどは、こ

のベンゼン環をもっている。ノルアドレナリン、アドレナリン、ドーパミンなどの

神経伝達物質がその代表だ。「脳を駆動するのはベンゼン環である」といって

も過言ではないのである。欲は遺伝情報をもったタンパク質を分解した各種

のペプチドホルモンの総和によって生じると推定され、その直接的作用はイミ

ダゾール環などのヘテロ環によって生じ、それがベンゼン環のホルモン作用

を駆動すると考えられる。人間の脳、人間の心はいかに分子という物質によ

って駆動されているものであるかが理解されたと思う。

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脳内麻薬

イギリスで麻薬モルヒネと同じ強力な鎮痛・快感作用をもつ物質が脳内から

発見され、脳内麻薬(エンケファリン)と命名された。脳内麻薬は20種ほど発

見されているが、そのなかで最強の鎮痛作用(モルヒネの約10倍)をもつも

のに、Bエンドルフィンがある。Bエンドルフィンは「内因性のモルヒネ」という

意味である。Bエンドルフィンは ペプチドのホルモンであり、その作用部分は

アミノ酸部分(エンケファリンに相当)にある。さらに、そのアミノ酸の作用部分

はチロシンであり、それが有するベンゼン環であったのである。現在までに発

見されたた脳内麻薬は、すべて作用部分はチロシンであり、その作用性はベ

ンゼン環に依存している。このようなことから、脳内麻薬は一種のペプチドの

ホルモンであるが、普通のペプチドホルモンとは、多少作用が異なることがわ

かる。すなわち、一般のペプチドホルモンがイミダゾール環を作用部分として

刺激的・覚醒的にはたらくのに対し、ベンゼン環に依存する脳内麻薬は鎮静

的、静隠的にはたらくのである。そして脳内麻薬はこの部分の科学構造を比

較すると、両者ともその主要部分にチロシンがあることがわかる。そして、脳

内麻薬はこの部分の科学構造を少しでも変えれば、モルヒネ作用を失う。こ

れは重要な点で、脳内麻薬は体内で分解される無害な麻薬だったのである。

これに対してモルヒネは分解しない脳内麻薬といった性質をもつ、それがモ

ルヒネの依存(習慣)性の原因だ。Bエンドルフィンの特徴は、強い鎮痛・快

感作用によって「精神的ストレス」を吹き飛ばしてしまうところにある。POMC

からは、ACTHとBエンドルフィンが同時、等量に合成され身体的、精神的ス

トレスが解消される。それが一つのタンパク質の合成、分解によって実現され

るのがPOMCのすばらしさなのである。さらに、このような核酸分子を介する

タンパク質合成が一度おこなわれると、それは核酸分子に記憶され、再度同

じストレスを受けるとすぐPOMCが合成されることになる。このようにして根

性、忍耐力という精神的な力も、分子レベルから追求すれば、タンパク質とい

う生命の根源物質の遺伝情報によって作られていたのである。偏桃核という

脳が欲の脳・視床下部とやる気の脳・側座核の中間にあり、偏桃核はなかな

か複雑な脳で、まだその性質はじゅうぶんに解明されていない。しかし最近で

は、動物が好きなもの、嫌いなものを見たとき偏桃核が電気発生することか

ら、この脳が「好き嫌いを決める脳」であることがわかってきたのである。記憶

には遺伝子DNAに組み込まれた生命記憶と、後天的な学習や経験による記

憶の二種類があり、「快感」を基準に記憶されている。どんな動物でも、快い

ことは喜んでするし、不快なことはしたくない。偏桃核はこの快・不快の記憶

をものさしにして、好き嫌いを峻別し、喜怒哀楽の根底を形成するのである。

偏桃核は海馬と側頭葉による記憶を参照しながら、瞬時に好き嫌いの決断を

しているのである。1964年、蛍光現象を使う新しい実験法によって、脳内の

無髄神経の分布が一瞬にして解明された。喜怒哀楽を生じるA・B神経系の

あっけない発見である。そしてその後の実験から、このA・B神経系の性質が

つぶさにわかってきた。すなわち、A系神経は脳を覚醒し、B系神経はA系の

活動を抑え、調節する抑制神経であることが判明したのである。A系列の下

位から6番目の神経がA6神経である。このA6神経は、脳を強力に覚醒視、

活動させる覚醒神経である。覚醒のほかに、学習、鎮痛、排尿、血液循環、

ホルモン系コントロール、体温維持などの機能も支配している。人間や動物

は、A6神経によって、毎日の活動をするのである。もし、このA6神経を実験

的に電気刺激すると、強烈な不安・恐怖が生じ、パニックに陥る。A6神経とと

もに、人間の精神活動に深くかかわっている神経がある。A系列の下位から

10番目にあるAI神経だ。AI神経は、人間の精神系だけに分布視、覚醒

と快感を生む快感神経である。人間の脳内にはこんなすごい神経があった

のである。快感は気持ちがよいことであり、人間でも動物でも大好きである。

この快感を生むのがAI神経とその神経伝達物質ドーパミンである。人間の

脳内それも主として心を生じる精神経の脳・神経で多量に分泌される最重要

な神経伝達物質がある。ドーパミンだ。ドーパミンは情を最高に駆動する快感

分子である。私たちが感じる至高の快感も、ドーパミンから生れる。そして、人

間だけの特別な「創造性」もドーパミンによって創られる。まさしくドーパミンが

わかれば人間性と人間の心がわかるのである。快感分子ドーパミンの最大

特徴は、人間の脳だけに特別に多く分泌される神経伝達物質であることだ。

人間の脳では、他の動物よりはるかに大量のドーパミンが分泌されている。

そのなかで、特に大脳新皮質の前頭連合野とその周辺の脳で、ドーパミンが

過剰分泌されているのだ。人間の脳だけが創造性を発揮できるのは、ドーパ

ミンの過剰分泌のためと考えられる。前頭連合野には多数のドーパミンレセ

プターがあるが、この近辺だけドーパミンの分泌を調整するレセプターがなく

なってしまっているのだ。その結果、ドーパミンの過剰分泌が起こり、創造性

が発揮されるのである。ところで最近、大脳基底核が思考や感情にも関係し

ていることがわかり始めている。大脳基底核は基本的には運動系の脳なの

だが、そのドーパミン分泌に異常があると、激しい妄想や幻聴が起きるという

のだ。精神分裂病患者の大脳基底核のドーパミンレセプターが、健康な人の

二倍に増えていた、という報告もある。いっぽう、人間の脳はたいせつな器官

なので、血液ー脳関門という特別な関所で保護されている。この関所は、脳

外からは水溶性の分子を通さない。ドーパミンのような毒性の強い分子が、

むやみに脳内へ入らないようにしているのだ。しかし、脂に溶ける脂溶性の

分子は通れる。そこで人間の悪知恵は、ドーパミンを脂溶性にして、血液ー

関門を通れるようにした。これが覚醒剤である。

多体問題

ノルアドレナリンとアドレナリンについて説明しょう。ノルアドレナリンは人間、

動物が生きて活動し、生活していくために第一に重要な分子である。朝はノ

ルアドレナリンの分泌によって目覚め、昼はノルアドレナリンによつて活動

し、夜はノルアドレナリンの分泌が減退して眠る、これが神経伝達物質からみ

た人間生活である。ノルアドレナリンには「怒りのホルモン」という別名があ

る。激怒したときに、ノルアドレナリンが多量に分泌されるからだ。これに対し

て、驚いて恐怖を感じたときに、ノルアドレナリンが分泌され、「恐怖のホルモ

ン」といわれている。もし、ノルアドレナリンの脳内での分泌が減少すれば、元

気を失って憂欝になり、鬱病になる。逆に過剰分泌されると躁病になる。この

ように、ノルアドレナリンは、脳もとより全身の活動源であり、「元気の素」とい

える神経伝達物質なのである。それにもう一つ重要なことは、ノルアドレナリ

ンとアドレナリンが猛毒の分子であるということだ。これ以上の猛毒は、フグ

毒、ヘビ毒、貝毒など数えるほどしかない。実は、ノルアドレナリンとアドレナ

リンが猛毒で科学反応が強いからこそ、微量で、強い作用が発揮できるので

ある。覚醒性の神経伝達物質であるホルモン分泌が多くなりすぎると、人間

は過剰に活動し、最後には死んでしまう。そうならないために、脳内ではドー

パミンなどの活動を抑制する神経伝達物質が分泌されている。それがセロト

ニンだ。セロトニンは環状の科学構造が複雑であるだけ、ベンゼン環をもつカ

テコールアミンの活動を微妙に調節し、コントロールしている。そのため万能

の調整役ともいわれる。そして最後に、セロトニンはA系神経を抑えこんで、

私たちを睡眠に導く睡眠物質となる。それ以外にも、脊髄の痛覚の遮断、血

液の止血などの各種の作用をしており、セロトニンはまだ未開の分野の多い

分子である。1981年のアメリカでの発見は、心を創出する前頭連合野とそ

の近くで起これば創造性となり、脳の精神系全体で広く生じれば精神分裂病

となるのである。すなわち、前者では天才的な創造性を生じ、後者では精神

病が発症する。天才と狂人は紙一重といわれるが、実際、世界的に有名な芸

術家ー特に画家には分裂気質が多いことで知られている。人間の脳にはもう

一つ大きな特徴がある。大脳が左右に分離していることだ。大脳が左右に分

離すると、前頭連合野もきれいに左右に分離し、それぞれの大脳に役割分担

が生じた。すなわち、左大脳はデジタル的大脳であり、右大脳はアナログ的

大脳であることも意味する。さらに左大脳が意識の世界を、右大脳が無意識

の世界を統括するともいわれている。そして心は、この両者の総合によって

最終的に創出されるのである。左右の大脳が分離したまま別々にはたらいて

しまっては、二重人格になり、都合が悪い。そのために、左右の大脳を緊密

につなぐ脳ができた。これが脳梁である。脳梁は、胎児のときにまず左右の

大脳ができ、その後で作られる。脳梁は女性のほうが男性よりも大きい。そ

れだけ女性は左右の連絡がよく、感情的、感性的なのかもしれない。人間の

脳、それによる思考、計算といっても万能ではなく、解けない問題が数々あ

る。その一つに「多体問題」という重要な問題があって、現在の物理学では解

けない代表的な問題になっている。それでは、多体問題とはなにか、たとえ

ば、多数の粒子がたがいに作用しながら運動する場合ーこれが多体問題で

ある。ところが、この多体問題を解くべき数字が残念ながらまだできていな

い。したがって現在のところ、多体問題を正確、厳密に解くことはできない。し

かたなく、「だろう」という近似法によって、近似的に、見当をつけて、解くしか

ないのである。近似法はいろいろ考えられるが、そのなかでも、もっとも容易

で実験的にも実証しやすい方法に「単体近似(一体近似)」という方法があ

る。この方法は、多数の粒子による多体問題が解けないから、多数の粒子を

一個の粒子、単体(一体)を中心に考えるから単体近似といわれる。この単

体近似によってきれいに解けた問題が、すなわち科学の問題(原子・分子の

運動問題)だ。原子・分子の性質や活動は、すべて原子・分子のまわりを回っ

ている多数の電子の活動によって決まる。その活動が、一個の電子を中心に

した単体近似によって、手際よく解けたのである。単体近似によってこの問題

が比較的きれいに解けたのは、原子・分子の活動がそのもっとも外側を回っ

ている一個の電子(最殻電子)の活動によって、近似的に決まるからである。

この外殻電子を中心にした単体近似によって、原子の周期的性質がわかり、

原子の性質が決まり、さらに原子の集まりである分子の性質も容易に解けた

のである。心のなかの情を創るベンゼン環の特性も、単体近似による電子化

学によって計算され、応用問題まできれいに解けている。もちろん、他の化学

の問題もすべて同じ程度に解けている。物理学は前世紀末に古典物理学が

行き詰まり、量子物理学を誕生させた。現代物理学の根底である量子論は、

二つの仮設(量子仮設と不確定性原理)から成立している。しかし、実際問題

を解くためには、単体近似という方法を巧みに使っててるのである。人間の

脳は、左大脳によって理性が、右大脳によって感情が創られる。このときま

ず、デジタル型の左大脳で正確、厳密に一個の電子(単体)の運動を解く。つ

ぎにアナログ型の右大脳で、他のすべての電子をまとめ、一つの場として、

近似的に限りなく真実に近ずくことができる。これが単体近似である。このよ

うに、人間はあらゆることに単体近似で見当をつけ、近似的に解いて成功し

てきた。この単体近似の思考法は、人間に未来予想をさせることも可能にし

た。未来はこうなる「だろう」という単体近似で将来に見当をつけ、それに向け

て創造性を発揮できたのである。これは左右の大脳をじょうずに使いわけた

結果であり、全身的に見れば、手足などにしても左右を使いわけていること

が多い。人間の脳のもっとも大きな特徴は、大脳新皮質だけが極端に肥大化

していることである。それによって、人間の脳は、二つの特別な性質をもつこ

とになった。第一の特性は、前頭連合野へ向かうAI神経だけオートレセプタ

ーが欠けたことである。このため前頭連合野では、他の脳より2倍から4倍も

ドーパミンが過剰に活動し、創造性を発揮できるようになった。第二の特性

は、視床下部が体内から脳内に侵入して大脳の融合を阻害し、左右にわか

れた巨大大脳が生れたことである。このことによって、理性(左大脳)と感情

(右大脳)が対等に分離し、二元論や「だろう」という単体近似を使った思考が

可能になったのである。この単体近似も、広い意味での創造性の一種といえ

よう。創造性を発揮させるためには、なんといっても前頭連合野へ向かうAI

神経を過剰活動させることである。創造性の発揮には、まず、視床下部によ

る欲の発動があり、つぎに偏桃核による好嫌いがあり、最後に側座核による

やる気がある。これらの「欲・好き・やる気」が内側前脳束を駆動するのだ。ド

ーパミンを分泌するA・B神経である。なかでも、オートレセプターを欠いたA

I快感神経によって前頭連合野が賦活される。このため、創造は常に快感を

ともない、創造と快感は表裏の関係にあるといえよう。

コメント

私達夫婦が異常現象に振り回されたのは、エネルギーグッツからのリズム

(波動)によってドーパミン(快感ホルモン)が大量に分泌したことが原因であ

ることが分かったのである。まさに精神分裂症であったのである。しかし、精

神異常の状態のなかでの情報を振り返ってみると、まったくの妄想の部分と

正常な情報が混沌として一つの情報として入っていたことである。だから、超

能力が発揮できる状態とは精神分裂症の枠の中に入ったり出たりすることが

条件なのである。この危険な精神状態を禅宗では(魔境に入る)と言う。中国

気功では(偏差)と呼んでいる。坊さん、ヨガの実践者、気功者などの中で精

神分裂症のまま戻れないで、精神病院にお世話になっている人が大勢いる

のであることを知っていただきたい。だから超能力を求めるだけの感性の上

げ方はやめていただくのが無難であるといえる。もし、そのような状態になっ

た時は、他力に頼らず自分自身で解決することである。人真似で正常な状態

に戻れる人もあれば、戻れない人もいるのである。呼吸法とか瞑想法などは

自己流ではやらないことである。もしどうしても実行したいのであれば、歴史

あってしかもその状態から脱出できるヒントを与えることの出来る指導者のい

る団体に入ることを勧めたい。オームの信者がいい例である。とんでもない

教祖であっても、信者がついていくのは、自分で正しいと自分で自分自身に

設定(インプット)していることによって、そのインプットを解除できるのはその

本人自身でないと解除できないからである。その本人が間違いであったこと

に気付き、自分でインプットを変えることで正常になるのである。いくら肉親や

友人が注意を促しても決して耳をかさないのであることを知ってほしいのであ

る。

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